いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
何となく、投げやりな雰囲気の声。
見れば、八木の眉が苦しそうに歪んだ。
――何を、言わせてるの?
真衣香は自分自身を殴りつけたい、そんな衝動に駆られた。
この優しい人に、自分は何を言わせているんだ?
ドクドクと怒りが血に乗って全身を駆け巡っているかのように、急速に広がってゆく。
(……私怖いからって、また傷つきたくないからって目を逸らして、でもそう、八木さんの言うとおり全部言うとおり)
ウジウジといつまでも動き出せなかった。どこにも走り出せなかった。
目指すものが決まっているというのに、真衣香の足だけが動かない。
そんな真衣香の毎日を、全てを見透かされていたというのなら。
真衣香を組み敷く、この優しい人は何をしようとするだろうか?
何をしてくれようと、するだろうか?
(坪井くんのこと酷い人って思ってたのに……私だって、人を傷つけてる、たくさん傷つけてるじゃない)
自分への怒りで唇が震える。カタカタと歯が当たって、うまく声が出せない。
「……め、なさい……」
「ん?」
力む真衣香の唇に気が付いたのだろう。八木の優しい指がそっと触れた。
途端に力が抜けて、嗚咽混じりの大きな声が溢れ出る。
「ごめんなさい、八木さん、ごめんなさい……!」
「質問するけど、何が、ごめんなんだ?」
「……う、うぅ、ひっ……く、うう……」
泣くばかりで会話にならない。そんな真衣香に呆れるでもなく、穏やかに囁く。
「泣いてるだけじゃ、さすがにわかんねぇって。ゆっくりでいいから教えてくれ」
涙で滲む視界に、ぼやけて見える八木の表情。泣きそうな顔に見えた。泣いているのは、真衣香だというのに。
眉尻を下げて、悲しそうに、笑っている。
真衣香の弱さと、狡さが、彼のこの表情を生んだ。
――逃げちゃダメ、八木さんにこれ以上嘘なんかつけない、絶対。
そう、心の中で強く叫んで唇を噛み締めた後。
今の、真衣香に出せる精一杯、大きな声で。八木に届くよう、偽りのない心のうちを曝け出す。
「つ、坪井くんのことが好きだから……!」
「……うん」
「わ、私……まだずっと、好きで……っ、好きなままだから」
「うん」
「八木さんの気持ちに応え、られません……ごめんなさい、ご、ごめ……なさ……」
泣きじゃくる真衣香の頭を撫でながら「やっと言ったか」と、呟いて。八木は助手席のシートをゆっくり上げてゆく。