いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「泣くな、手荒な真似して悪かった。まあ、お前を抱きたいと思ったことならぶっちゃけ何回もあるけど、今に限ってはその気はなかったからな」
「や、八木さん……」
「おう、なんだよ」

(何が、何が……俺を納得させろ……なの、こんなの全然八木さんの為じゃない)

八木が真衣香に言わせたかった答えは、どこまでも、真衣香の為で。理解してしまうと、切なさが心臓を握りつぶしてしまうのではないかと思うほどに軋んだ。

「私の気持ち……どうして……知って、ううん、気づいたんですか?」

途切れ途切れの言葉に、八木は「んー」と目線を上にして考えるような表情を見せた後。

「俺もさぁ、お前がマジで失恋したんだっていうんなら死んでも行かせねぇよ坪井のとこなんか」
「え……?」
「つーか、お前は考えてることが顔に出過ぎなんだよ」

質問の返しとは思えない言葉を口にした。
そして真衣香に跨っていた体勢から元に戻り、運転席に座りなおした八木が、真衣香の乱れた着衣を丁寧に整えていく。

「……でも昨日のお前ら見て思ったわ。ちゃんと話して来い、腹ん中に溜めてるもん全部」

あまりにも優しい声に、止まりかけていた涙が、また溢れてきた。

「あー、おいコラ泣くなよ、もう何もしねぇから」

泣き止んできたと思った矢先に、またか。と思われたかもしれない。八木の慌てる声が車の中に響いて、その後、何かを思い返すようにボソッと小さく呟いた。

「つーか、なぁ。でも怖いわな。あの訳わかんねぇ男に、またぶつかろうってのは」

宥めるように、背中をポンポン何度も撫でる。その手の暖かさに、また胸が痛んでしまう。
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