いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「でも、お前が知らねーだけで。基本的に男と女なんて綺麗事で済むことないから」
そう言って、背中に触れていた手が離れて。
次に、その手は涙で濡れる真衣香の頬を撫でた。
「き、綺麗……事?」と、聞き返すと八木は軽く頷いて。
「俺は、もうすぐ25になる女に世間一般で言うところの”正しい”恋愛しろとは、思わねぇよ」
少しだけシートを倒し、頭の後ろで手を組み、長い脚を狭苦しそうに組んで。
それから、小さな声で。でもはっきりと言ってくれたけれど。
……世間一般、正しい恋愛とはなんだろうか。それすらも真衣香には分からない。
「わかってて、傷つきに行く奴も、そりゃ山ほどいるよ。いつだって綺麗な恋愛ばっかできるわけないんだからなぁ」
「傷つきに……って」
無意識に声に力が入った。
それもそうだ、真衣香は傷つくことを恐れて坪井への気持ちを認めることができないでいたのだから。
「俺のまわりには若い女に手出してる嫁持ちもいるし、そうじゃない奴もいるし」
(嫁持ち……?)
首をかしげた真衣香を、八木が、いつもの調子でポコっと殴った。
「お前くらいの女だって、誰かのもんを寝取るなんて、別に珍しいことでもないだろ。世間じゃよくある話だ」
「寝取る……?」
「話通じねぇな、お前は。なんで無事に生きてきたんだ?」
八木が、呆れたように真衣香の顔を覗き込んだ。
「よくわからないですけど……ひどいです」
尖らせた唇を八木の指が軽く弾き「しょうがねぇ奴だな」と、笑った。言葉とは真逆にとても優しい声をしていて。