いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「きっかけは、お前がいると飽きねぇなって、総務での毎日からだけど。でも今は、ちゃんとやっていこうって思えてる。だから異動も受けたし」
言いながら八木の長い指が、しなやかに真衣香の髪を梳いた。
「間違いなくお前のことは特別だし、惚れてんだけどさ。ただ……なんつーか、坪井の隣でバカみたいに嬉しそうにしてるお前が1番可愛かった」
「……っ!」
真っ直ぐに届く優しい声。真衣香の胸は奥底から何かにきつく掴まれてしまったかのように軋んで、痛んだ。
「それがお前の質問への答えだ」
やけにキッパリ言い切って、触れ続けていた真衣香の髪から指を離した。そして、その指でうつむく真衣香の顎をグイッと持ち上げる。
「いーか、俺は俺のやりたいようにした。お前も、やりたいようにやれ」
「……私だって八木さんがいなきゃ、そ、総務続いてなんか……!」
真っ直ぐに八木を見上げて、涙をこぼす真衣香。気持ちには応えられずとも、この二年の感謝だけは嘘偽りなく真実で。どう伝えたなら、いいのだろうか。わからなくて流れてしまう涙。
それを見て、眉を下げて困ったように八木は笑った。
「わかってるっつーの。俺がついてねぇと全然ダメだったよ、お前は。マジでつい最近までな。あー、ほら泣きやがって」
大きな手が「しょうがねぇな」と真衣香の顔を包むようにして触れ、溢れる涙を拭う。
そして何かを思い出したように「あ」と声をこぼし、次は気まずそうに顔を背けて小さな声で言った。
「あー、あと悪い。下着、ホックな。自分で留めといて」
「え!?」
慌てて八木に見えないように……といっても今更なのだが。窓に背を張り付けるようにして背中に手を突っ込み、慌てて金具を重ね合わせた。
そういえば、乱された着衣は真衣香が茫然としてるあいだに八木が整えてくれていたのだったが。
(そりゃ、そりゃさすがに……ブラのホックは自分で気づかなきゃ)
大人の女が遠ざかってゆく思いだ。
「さっき悩んだんだけど、手突っ込んだら……さすがに揉むわ、って思って」
「も、もも、も!?」
八木のからかうような口調に、どこかホッとしていつもの調子で返していると。一点、強張った声に変化した。