いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
真衣香は沸々と心臓を煮えたぎらせていく抱えきれないほどの、まるで夜の闇のように黒い感情を、どうにかしたくて坪井にぶつけた。
「ちょ、ちょっと待って、待って待って違う」
「八木さん言ってた。憂さ晴らしに男は女を抱けるんだって」
「抱け……、だ……、え!? なんの話してるの八木さんと! てか、違う、友達と飲みに行ってた!中学の頃からの友達、男!」
「抱くとか、お前の口から聞くとビビる……」とボソボソ言って視線を逸らしながら真衣香の手を掴んだ坪井だが。
その途端に「つめた!!!」と、また大きな声を響かせ、それから暖めるよう真衣香の手を包み込んでジッと顔を近付けてきた。
「……手冷たいよ! いつからここにいたの? 連絡くれたらすぐに帰ってきたのに」
「あ、電話もメッセージも送ったけど、全然繋がらなかったから」
「は? いや、何も」
坪井はハッとしたように慌てて片方の手だけを真衣香から離し、コートのポケットからスマホを取り出した。
「うっわぁ……」
画面を見ながら、坪井は呆れたように「終わってんな、俺」とギリギリ聞き取れる程度の小さな声でつぶやく。
「ごめん、電源切れてた。昨日充電せずに寝てたから」
「そ、そうだったんだ……じゃあ、その口紅つけた人と一緒にいたいから電源切ってたわけじゃないんだね」
坪井は「ぐ……っ」と何やら呻いて、触れる手に力が込められた。
それとは反対に小さくなっていく声。
「違う。一緒にいたい人なんて……お前しかいないし、ほんとに、違うから」
「そっか」
「……女も、いるとこに飲みに行ったのは、行ったけど、でも、それだけ。これはちょっと油断したけど」
「お前に軽蔑されるようなことはしてないつもりだから……多分」と、声だけでなく、肩を落とし小さくなって見える坪井の姿。
それに、救われていく自分がいる。
(やだな、なにこれ。根掘り葉掘り、嫌な女だ……私。そんな権利ないのに)