いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


目に見える事実を、真衣香の頭が正確に認識した途端、脳裏によみがえったのは『好き』だと何度も伝えてくれてきた坪井の声だ。
信じようとも、まともに聞き入れようともせずに否定してきた言葉。

真衣香の目からは、堪える暇さえもなく涙が溢れ出した。ポタポタと大粒の涙が足もとに落ちていく。

だから、「立花、ごめん。酒しかないから何か買ってくるよ」と言ってくれた坪井の方を振り返ったなら、当たり前だけどひどく驚かせてしまったのだった。

「え、ど、どうしたの!?」

坪井はキッチンから、転げそうな勢いで走って真衣香の目の前までやって来て、顔を覗き込む。
突然押しかけて来た挙句、部屋に入れてあげたなら泣き出すなんて。どこか冷静な頭の奥にいる自分が己の行動を、呆れたように振り返らせるけど。

けれど、何よりも先に、逃げてばかりだった自分の行動を謝りたかった。好きだとか、信じるだとか。口先だけだったのはどちらだろうか?

「……坪井くん」
「う、うん、どうしたの?」
「私、坪井くんの話……何も聞こうと、しなくて……ごめんなさい」
「え?」

殺風景になった部屋の中で”お前以外誰も呼ばない”と言い切っていくれた、坪井の声が、言葉が。真衣香の心の中で真実になっていく。

「覚えてる? 坪井くん。前に、楽しくて笑ってる坪井くんと、笑おうとして笑ってる坪井くんの違いくらいはわかるようになったよって……言ったの」
「……え、あ、ああ、うん。そりゃ、お前と話したことならもちろん覚えてる」

坪井は、唐突な真衣香の言葉をどう受け止めればいいのかわからない様子で答えた。真衣香も、もう少しうまく切り出せないものかと内心思ったのだが、きっと考えてばかりではうまく伝えられないんだろう。
こうして溢れ出した気持ちこそ、ありのままに声にするべきなのだろう。

そう感じたから、声を止めることはしなかった。
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