いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
「そのあと、まぁ、その子いじめてた主犯格の女と付き合えとかよくわかんない流れになって、母親も病気で死んで、俺は俺で深く考えるのも面倒でやめちゃってさ」
あっけらかんとした声色。
恐らく真衣香を必要以上に怯えさせない為、軽い口調で話していてくれたのだろう、坪井が。
そっと真衣香の頬に手を添えた。
「てか楽しくないよな、こんな話。ごめん、せっかく来てくれたのに」
真衣香は坪井の言葉を聞いてギクっと身体を揺らした。
不自然に力が入っていた顔に、坪井の手が触れたからだ。どんな顔をしていれば正解なのか、全くわからなかったから。
きっと敢えて引き攣った笑顔に触れてくれたんだ……。
(聴きたいって言ったの、私なのに……!)
謝らないで欲しい、と。首を横に振ることしかできない。坪井はそれを、口元だけに笑みを作り眺めながら言った。
「昔からの俺の連れは、お前だって親が入院長引いてる時期だったんだからしょうがねぇよ。とか言ってくれるんだけど、それってどう考えても違ってさ」
「……ど、どうして」
問いかけた真衣香を見て、気まずそうに眉を下げた坪井が弱々しく「うーん」と唸る素振りを見せる。そして、自らを嘲笑うように乾いた笑い声を響かせた後で答えてくれた。
「そもそも、自分のことで精一杯で、気晴らしに友達と騒いでるくらいがちょうど良かったんなら……彼女なんて作らなきゃ良かったわけだし」
「そ、そんな……」
「俺が自分のキャパ理解してれば何も起きなかったんだよなぁ、多分」
明るく、そして淡々と話しているように見せてくれていた坪井の表情が、初めて真衣香の目にもわかりやすく歪んだ。「そのくせ、人のせいにばっかしてたんだよね」と自嘲しながら。
「こんなことが学校であったんだけどさって。そんな話もさせてくれない……母親が死んだ後の暗いばっかな家に嫌気がさしてたし」
次は、眉を寄せて、苦しそうに目を閉じた。その瞼の裏に浮かんでいる映像はどんなものなのだろうか。
想像もできない。幸せすぎた、自分のこれまでを初めて実感する。
「どこに吐き出したらいいかわからない恐怖とか、じゃあ何が正解だったのかって、問い正すにも……それをどこに向ければいいかわからなくて」