いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


自らの手首を眺めるように伏せられていた坪井の瞳が、再び真衣香を捉えた。震える息遣い、それをただ見守るしかできないなんて。

「俺は……本人じゃないからあくまで予想だけど、自傷行為って死ぬことよりも現状打破が目的なことが多いんだってね。だから明らかに俺に何とかして欲しがってたんだよ、あの子」

真衣香は返す言葉を考える余裕もなく、坪井を見つめていた。こんな時に何の言葉も浮かんでこない情けなさばかりが渦巻き、強く両眉を寄せる。

「そんなの”今”考えればすぐわかるんだ。でもあの頃は短絡的に、その行為がイコール”死”に直結したし、人が死ぬって事実が身近だったからかな。血とか連想するもの見るのも嫌だった」
「ひ、人が死ぬことが身近って……?」

坪井は中学の頃の話と言った。真衣香はその頃の自分を思い返すけれど、小さないざこざはもちろんあったが誰かの死など、触れずに過ごしていたと思う。

しかし坪井は、当たり前のことのように頷いて「そう、俺の母親。病気だった」と、答えた。

「これも”今”なら、考えるまでもなくわかるんだよ。関係ないんだ。確かに当時母親は余命も伝えられてて危なかったし、でも彼女のことと母親のことって全く別問題」
「今……なら」
「うん、全部"今"ならわかる」

真衣香が坪井の言葉を繰り返すと、彼もまた強調するように"今なら"と噛み締めるよう、口にした。そして、何かを思い返すように瞳が揺れ動き、またゆっくりと話し始める。
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