いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
(いや、落ち着け、困ってる場合じゃないから)
坪井は前髪を掻き上げながら天を仰いだ。
優里の言葉に反応を返し過ぎだ。
坪井は上を見たまま軽く息を吸い込んで、静かに吐く。
頭に酸素を入れ、自分のペースを取り戻したかった為だ。
青木芹那の名前が出てからの自分は、やはり焦っていた。
(……とりあえず、この女が言ってること結構無茶苦茶だろ。何素直に話聞いてんだってバカか)
空になったコーヒーカップを二つトレーに乗せて持ち上げ「出ようか」と短く言い、歩き出す。
後ろをついてきている優里へ、返却口にトレーを置きながら話しかけた。
「なあ、優里ちゃん知ってる?」
カツカツとヒールの音を響かせながら優里が気怠そうに答える。
「何が?」
「間違える人間って大体自分の中での優先順位、定められてない奴なんだよ」
互いに前を向いて、目を合わせずに進む会話。
自動ドアが開いて、数歩違いで店の外に出た。
「今話してて、青木と立花。優里ちゃんがどっち向いてんのかわからないんだよね」
「な、何それ、どーゆうこと?」
気怠そうな声から一転。優里の強張った声は、それを認めているのと同じだ。
「優里ちゃんの中でも多分、わかってないよね? じゃあ結果として立花が傷つく可能性もあるわけだ。結果読めてない奴が他人を動かそうなんて、やめた方がいいよ。それ絶対後悔するから」
振り返らずに長々と喋り続けたが、表情を見ずとも優里の機嫌が急降下していったことには、十分気がついた。
長ったらしく、そしてわざとらしくため息をついた後小さな声で「めんどくさ」と呟いたから。
その後負けじと優里は声を張り上げた。
「なんの話かよくわかんないけど、坪井くんはとりあえず立場的にもうちょっとさ」
「立場も何も、開き直って言わせてもらうけど!」
坪井は優里の声に被せるように声を荒げる。
優里の上からな物言いに、いい加減うんざりとしてきたからだ。
「俺別に青木芹那に対して犯罪犯したわけじゃないの、わかる?」
怒気を大いに含んだ声のまま振り向いて、きつく睨みつけた。
それを見て、ようやく優里は黙る。
「そりゃ、もちろん俺に落ち度があったし、優里ちゃんの身内を傷つけた。それは認める」
ジリジリと距離を詰めたなら、その分優里は後ずさる。
「でも、俺からすれば、だから何? って逆に言いたくなるけど。それ立花がいないとこでこそこそ動き回る理由になる?」