いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


***

その日の昼休み。

会議室でお弁当を食べたり、外に食べに出たりと。みんなそれぞれだが真衣香は大体総務の自分のデスクでお弁当を食べていることが多い。

最近でこそ、小野原や森野といった営業部の面々と関わりがあるが、これまでは仕事以外で会話を交わす人物など八木や杉田だけだった。
その二人がランチに出てしまい、いつもどおり一人でお弁当を広げているとドアが開かれる音。
続いて「あれ、ひとり?」と、もう今では聞き慣れてきた声。

真衣香は咄嗟に笑顔を作る。
 
「坪井くん、お疲れ様」
「うん、お疲れ~。八木さんは?」

キョロキョロとフロアを見渡しながら坪井が近づいてくる。

「杉田課長とお昼に出たよ」
「そっか」

短く答えた坪井は、肩から重そうなビジネスバッグをかけている。

「今から外出?」
「うん、昼食べに出てそのまま行こうかなって。その前にお前に会っときたくてさ」

言いながら真衣香と目が合うと、パッと顔を明るくして微笑んだ。
つられて真衣香の気持ちが明るくなったところで、人が少ないフロア内に振動音が数回響く。

「あ、ごめん。俺だ」

音が鳴らないのならば、それは会社のスマホではなく個人のスマホで。
これまで真衣香と一緒の時には、それを優先させることはなかった。
真面目な顔で画面を眺める坪井。相手が誰かなんてすぐにわかってしまった。

そんな姿を見ていることに耐えられなくなり、真衣香は自分で作った代わり映えのない卵焼きとウインナーがメインのお弁当に目を移した。
しかし俯いた頭に、気遣うような優しい暖かさを含んだ大きな手が、すぐに置かれた。

「……芹那ちゃんから連絡?」

無意識に声に出して聞いてしまっていた。言葉にした後すぐに押し寄せる後悔。

(聞いてどうするの……)

置かれた手が、離れて。
代わりに顎に添えられた、細くも骨張った指で上を向かされる。

「違うよ、隼人。冬休み中に会ったでしょ」
「え、隼人くん?」

てっきり相手は芹那だと思い込んでいた真衣香は、ホッと大きく息を吐き出した。
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