これは恋ですか。
「帰りましょう、久我さん。
さっきの映画の音響の感動、忘れる前にまとめて下さい。
私も、協力しますから」

久我さんは、ハッと顔を上げた。

「そうだった。
専務のことが衝撃的すぎて、忘れてた。
九条さん、とりあえず会社近くまで付き合って。
その間に、頭の中まとめるから」


頭の中、まとめる?


久我さんの言ってる意味がわかるのは、そのすぐ後。
久我さんは考えに夢中になって、前もよく見ない。

「信号、赤です。止まって下さい。
はい、青です、渡りますよ」

あぁ、この会話、考え中のお父さんにしてるみたい!
久我さんは、もう誰と歩いてるかもわからないんだろうな。

「久我さん、また、赤信号です」

ついに声も聞こえてない。赤信号でも平気で横断歩道を渡ろうとしてる。

仕方なく、私の右側を歩く久我さんの肘を掴んだ。

「おっと」

久我さんが流石に足を止める。

「久我さん、赤信号ですから」

「あぁ、そうか。
九条さん、悪いけど、大和って下の名前で声かけてくれる?いつも、威が俺のサポートしてくれるから、苗字で呼ばれても反応できない」

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