これは恋ですか。
なるほど。それで気づかなかったのか。

「あ、青になりました。
渡りましょう。
…大和」

下の名前で男の人を呼ぶなんて、初めてで。
つい、緊張してしまう。

「あぁ」

久我さんは、私に名前を呼ばれる事に何の感懐を抱いた様子もなく、横断歩道を渡りだした。


なんだか、意識してしまった自分がバカバカしくなった。
だから、その、1回目だけ。ひどく緊張して呼びかけた名前だけど、その後はそんな事気にもしていられなかった。


「大和、地下鉄の入り口、こっち」
「大和、階段降りるから!少しだけ階段に意識を向けて!」
「改札くぐりますよ、大和」


大和と呼びかけると、確かに反応してくれる。
何かあったら、と怖くて掴んだままの肘を引っ張れば、足を止めてくれる。
全く、世話の焼ける人だなぁ。普段どうやって生活してるんだろ?


「…着きましたよ、大和」


なんとか会社の建物の前までやって来た。

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