俺様副社長に娶られました
ベッドの上で目を覚ました沙穂は、天井を見つめ、記憶をたどるように静止した。
数秒後、昨夜の出来事を思い出したのか急に慌ただしく黒目を左右にキョロキョロさせたかと思ったら、今度は刻むような角度で慎重に俺を見上げる。


「っあお! おはようございます……」


掠れた声で言い、さっと毛布で上半身を隠して起き上がろうとするのを阻止して後ろから抱き締めると、「きゃ!」っと子どもみたいに柔らかい頬をピンク色に染めた沙穂をベッドに再び引き込んだ。


「あ、のっ、創平さん……!」


本気でどうしていいかわからない、といった追い詰められた声を上げる沙穂にぴったりと素肌を寄せ合って、首筋に口づける。
逃げないように真横からきつく抱き締めて、足を絡めて拘束する。

プロレスの技かよって思えて自分でも呆れる。
手放したくない欲求が解放されまくっている。


「今日、お仕事はお休みなのですか?」


まだこんなに隙間無く密着するのに慣れないのか、恐らく照れ隠しで口元に両手をあてている沙穂が、くぐもった声で言った。


「ああ」
「行きたいところがあるんです、けど……」


ダメ。
今日は一日中、こうして沙穂を独り占めしていたい。


「……創平さん?」


無反応な俺を不審に思ったのか、沙穂は「寝ちゃったんですか?」だなんてお気楽なことを言ってのける。

……だから。
眠れるわけないだろ。
隣にずっと好きだった女性が寝ているこの状況で。

そう反論したい気持ちをグッとこらえ、沙穂の胸の膨らみを両手で包み込む。


「っあ!」


ピクッと小さく震えた沙穂は、鼻にかかった甘い声を漏らした。

うなじに唇を馳せると、顔どころか耳まで紅潮させた沙穂の両足がきゅっと引き締まった。


「ね、寝た振りなんて、ひどいです……っ」


首を回して俺を見上げ、涙目になって抗議する。
その反応が可愛すぎて、俺は意地悪する手を止められなくなる。
< 109 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop