桜の咲く頃……… 君を想う
「失礼します………………。」

今日も俺が寝ていると思ってるのか………

小声で挨拶して近づいて来る。

薄目を開ける勇気が持てない俺は、うつ伏せに寝れば良かったと後悔する。

声の感じから………たぶん木下さんだとは思うけど………

確信は持てない。

「…………………先生?」

やはり小さな声で話しかけてくる。

目を開けるべきか??

悩む俺。

「喉………まだ辛そうですね。
おだいじにして下さい。」

独り言と共に………カタンと何かがテーブルにあたる音がした。

間違いなく彼女だ。

目を開ける事を諦め、そのままの姿勢を保って

彼女が遠ざかるのを待った。

…………………………パタパタ。

遠くから聞こえる靴音に、フッと息を吐いて目を開けた。

………………木下さんかぁ。

あめ玉二つ摘まみ、頬が緩んでいた。

俺の体調を心配してくれる人……………久しぶりだな。

登場してから去っていくまでの時間。

俺も緊張したけど………

それ以上に、彼女の緊張が伝わってきた。

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