笑顔の行方

水族館

「彰人君、見て見て!」

3歳だった寧々を連れて来てから…十四年の月日が流れている。

初めての水族館に、おっかなびっくりだった幼い寧々。

薄暗い館内に、ビクビクしながら足を進めていたのが

昨日のことのように思い出されるが

現実には

幼児が、年頃の娘に育つほどの時が経った。

…………今じゃ、彼女だもんな。

感慨深く眺めていたら

「もぅ。
何回呼んだら良いの~」と、頬を膨らませている。

「悪い悪い。
あの頃と随分変わっているから、ちょっと思い出に浸ってた。」

あの頃は、入り口にキャラクターが陣取っていたが。

今はインスタ映えするように

砂浜と波打ち際が再現されて、キラキラ輝いている。

「ここで写真撮ろう。」

俺の腕にしがみつき、スマホをかざす。

「良いけど、SNSにはあげるなよ。」

女子高生らしく、スマホ命の寧々だが

おじさん世代の俺達には、仕事のツールとしてしか必用を感じない。

「だったら、彩姉に送ろっと!」

俺との年の差恋愛は、流石にクラスメイトには話してないのか

専ら彩ちゃんに、送っている。

まぁ、20歳近く離れてたら…………引くよな。
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