梅咲君にはツノがある ~私、節王様と結婚します!~
「はあ、はあ」

 仕事をしている人たちに見つからないように、フェンスの高さでしゃがみ込んだまま塀の上を進む。

 建物がなくなってしまったからわかりにくいけれど、もう少し先に枝垂れ桜と梅の門が並んでいるはず……なのだが。

 かなり見晴らしの良くなった敷地を見渡しているはずなのに、青く茂る大きな木がどこにもない。正門側のソメイヨシノが遠くに見えるだけだった。

 梅の木がない!? それじゃ私、向こうへ行けない!

 ……というよりそもそも冷静になって考えてみたら、ハルと手を繋いでいない私が行けるかどうかがまず不確かだった。

 なんの根拠もなく精霊界に行けると思っていた私はバカだ。

 ずっと当たり前のように精霊だの気だのと言っていたから、それが普通だと勘違いしていたのだ。
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