婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「授かりものですから、私もどうなるか分かりません。でも後継ぎ問題は両家に関わりますし、できれば若いうちに早く、という考えは持っています」

 深いところまで話し過ぎただろうか。でも政略結婚をした私たちからは切り離せない問題なので、このタイミングで話せてよかった気がする。

「それに、両親に早く可愛い孫の顔を見せてあげたいんですよ」

 ふふっと笑いながら言うと、神妙な顔つきだった新さんの表情も少しだけ和らいだように見えた。

 おでこに優しくキスをされてから、また胸の中へ閉じ込められる。

「そこまで真剣に考えているとは思わなかった。ありがとう」

 私の話に耳を傾け、真摯に受け止めてもらえて、胸のつかえが取れたみたいにすっとした。

「でもあまり気負わなくていいから。本音を言えば、俺としてはしばらく茉莉子を独り占めしたいし」

 え?

 言葉の真意を確かめたくて顔を上げようとしたのに、強い力で頭ごと抱きしめられてそれは叶わなかった。
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