婚約破棄するはずが冷徹御曹司から溺愛宣言されました
「浮かない顔してどうした?」

 朝食の支度をしていると、ふいに後ろから抱きしめられた。

「もう、火の元でこんなふうにして危ないですよ」

 やんわりと腕をほどいて注意をする私の顔は真っ赤になっているだろう。

 いくら触れ合う回数が増えたといっても、甘ったるい新さんは色気があり過ぎてときめきは増すばかり。

「手伝う」

「ありがとうございます」

 用意したものを一緒にテーブルへ運んでもらう。今朝のメニューは白ご飯にお味噌汁、鮭の西京焼きに大根や人参などの煮物だ。

「それで、なにを考えていた?」

 隠し事は苦手だ。それに新さんは過保護なところがあるのでここは素直に話した方がいいよね。

「新さんはお仕事で忙しいというのに、私は社会にも出ず大学を卒業してすぐに結婚をしたので、なんというか……」

 言い淀んだ私を一瞥した新さんはお茶で口を潤して続きを促す。

「引け目を感じる?」

「そんなところです」

「でもアルバイト経験はあると聞いているが」

「そうですね。就職活動すら必要ないと言われた時になんとか父に頼み込んで許してもらえたのですが、働いたといっても週に二日勤務できたらいい方で、しかも一年間だけです。それに東来百貨店の調理器具売り場ですよ」

 調理器具について詳しくなるなら花嫁修業の一環になるじゃない、とお母さんの後押しがあったから、一年だけという期限付きでなんとか働かせてもらえたのだ。
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