【短】Reduce
それから数日が経って。
窓口の辺りがざわついているのに気付いて、そちらの方へ向かうと、なんと彼の姿があった。
しかも両手いっぱいのバラの花をたずさえて。
「あたる、くん?」
「みゃーこ、迎えに来たよ。今度こそ…結婚しよう。いや…俺と結婚して下さい」
サッと差し出された花束にためらっていると、唯一仲良くなった同僚に背を押され、受ける形になってしまう。
「みゃーこを見付けられたら、絶対にこうしようと思ってたんだ。奇跡を信じてよかった」
「し、仕事があるから…あとにしてくれる?」
私の声は固い。
それでも、彼はにっこりと微笑みながら「突然ごめん」
と、去っていった。
私は目眩がした。
強引にも程がある。
いくら、そこに〈想い〉があったとしても、人のテリトリーに急に入り込んで来て、これはないだろう。
「もう…あたるくん、何考えてんだろ……」
そう、呟くしか出来なかった。