【短】Reduce
「で?なんでこんなことになってるの?」
私は腕を組んで、髪を掻き上げる。
ここは、私の家から近い公園のベンチ。
夕方を過ぎたこの時間はほとんど誰もいないから、とこの場所を指定した。
きゅっと口唇を結んで、彼を見上げると彼は真剣な顔をして、
「みゃーこを失ってから、気付いたんだ。自分がどれくらいみゃーこを不安にさせてたかって…」
彼の顔はどんどん曇っていく。
私はそんな彼の次の言葉を待った。
「みゃーこは、俺のこと全部分かってくれてると思ってた。だから、なんで結婚に乗り気じゃないのか分からなかった」
「…………」
彼は、絞り出すような声で自分の思いの丈を私にぶつけてくる。
「好き、なんだ。出逢ってから…いや、本当は出逢って間もなく…」
「え…?」
「お祖父さんが亡くなった時、みゃーこは泣いてた。人がいなくなったオフィスで一人、お祖父さんの写真眺めて…一人泣きじゃくってた」
「……知ってたの?」
私は、あの日の事を思い出す。
しっかりしろと親戚や親から肩を叩かれ、必死で隠した涙が、ふと机の中にあった2ショットの写真にあふれ出し…その場もはばからず泣いたことを…。