【短】Reduce
そんなことはない、と言いたい。
けれど、あの時と今ではお互いに立場が違う。
「私、彼氏いるんだよ?」
「うん。知ってる」
「あの頃みたいなスキルは持ってないんだよ?」
「うん。分かってる」
「……もう、一人になるのは…嫌だよ?」
「うん。絶対に離さない。最初に約束したろ?」
そう言いながら、彼は私を抱き締めた。
初めてデートした時に、言われたセリフと同じことを唱えながら。
「この世界の全てを捨てても、美都だけは離さない」
と。
「世界の終わりがたとえ来たとしても美都を愛する」
と。
「あたるくんっ」
「みゃーこは、俺のものだよ。それはずっと変わらない」
だから、これを受け取って、と彼はポケットから小さな箱を出すと、少し緊張しているのか震える手で私の左の薬指に煌めくリングをはめた。
「…っ」
「みゃーこは、誰よりも綺麗だ。それは俺だけが知ってればいいよ」
いつもいつも無表情で、可愛げのない私を救い出してくれたのも、こうして温かな涙を流させてくれるのも、この世でたった一人。
彼しかいなくて…。
そう思ったら全身から愛しさが込み上げて、私は、彼のことを抱き締めていた。