【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


今のだって葵くんがそう思ったってわけじゃないのに。


これ以上こんな顔を見られたくなくて、勢いよく立ち上がったその瞬間。


パシッ……と、手を引っ張られて引き戻されそうになった。



「勘違いしてていいよ?」


「っ、」



葵くんの声に、背中が焼けそうになる。


ドキドキしてどうしようもない私は、振り返らずに境界線を飛び越えた。


ふすまを閉めて、布団にぐるんっとくるまった。



────だから、



「……勘違いじゃないんだけどな」



葵くんがなにか呟いたような気がしたけれど、なんて言ったのか聞こえなかった。



私はその夜、なかなか眠れずにいた。

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