【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
臆病になって逃げていたのは私の方だったのかもしれない。
8年前のあの雨の日から時間が経つにつれて少しずつ事件のことが世間から忘れられて。
そうすれば、誰もお父さんを傷つける人はいないんじゃないかって思っていた。
────でも、そうじゃない。
逃げることは簡単だけれど、立ち向かうことや歩み寄ることはいつだって難しい。
それに気づいた今、もう目を伏せ続けるのはやめよう。
こうして信じてくれる誰かはちゃんといるんだから。
葵くんや海ちゃんが、私やお父さんを信じて寄り添ってくれるように。
* * *
体育祭まであと3日。
6月も近いせいか、体育祭が迫っているっていうのに天気は以前にも増してぐずついていることが多かった。
「綱引きって、お前戦力になってんの?」