【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?
「あ、葵くん!もう行ったかと思ってた」
さっき借り物競争のグループの男子と教室を出ていく姿を見たんだけどな。
「忘れもんしたから戻ったんだよ」
忘れ物……?
「早く後ろ向いて?」
「えっ!?こ、こう!?」
言われるがままくるんっと背中を向ける。
「ハチマキもまともに結べないの?」
「っ、」
からかう口調で言いながら、私のハチマキの結び目を静かにといていく。
「ホントお前ってしょうがない奴」
「出来るよ……っ、これくらい自分で」
結び直してもらったところで、葵くんの方へと振り返った。
恥ずかしくて、本当はありがとうって言うべきなのに、なかなか言えなくて……。