【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


八雲先生が消してくれたって言っていた。



────ギィ…



重い扉をそっと開ける。


わざわざ本当に消えていることを確認しようと思ったわけじゃない。


ただ、どこかで安心したい自分がいたのかもしれない。



……そんな、自分の不安を消したいだなんて思わなければよかった。


この時の私は、少しも気づいていなくて。



薄暗い体育倉庫。

意を決して中へと踏み出した。



青空に浮かんだ太陽が室内へと射し込んで、壁一面がハッキリと映し出される。



「なん、で………?」



────そして、私はすぐに後悔する。



あの時となにひとつ変わらない光景がそこにあったから。


壁を埋め尽くす悪意の言葉は、再び私の心に深く傷をつけた。



どうして……?


だって、体育倉庫の壁は、八雲先生が消したって言っていたはずなのに……。



たまらなく、嫌な予感がする。

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