【女の事件】十三日の金曜日
第36話
10月24日に発生したギロチン殺人事件が原因で、ゆかこの一家が暮らしていたマンションで散発的に発砲事件が起こるようになっていたので、住民のみなさまは引っ越しをしていた。

どぎついメイクをしていた女性従業員さんがギロチンで殺されてしまった事件が原因で、残された家族はより過酷な状況下に置かれていた。

片原町駅の近くにあるカフェベーカリーは、経営者がホーマン経営していたことが原因でやくざの取り立て屋が40人で押し掛けて来た他、亡くなった女性従業員さんの姉の夫も、ホステスに物をプレゼントするために億単位の借金をするなど女がらみの問題を起こしていたので、やくざの取り立て屋が家に押し掛けて来るなど…きわめて危険な状態におちいってしまった。

ゆかこたち一家は、四国中央市豊岡町大町にある父親の実家へ転がり込んだ。

実家には、兄夫婦が暮らしていた。

兄夫婦は、父親はシューショクする意欲がないので仕方がないのでメンドーを見ることになったが、母親とひろかずとゆかこはシューショクしないとダメと言われた。

母親は、経営している印刷工場の経理の手伝いをすることになった。

ひろかずは、丸亀の造船所の工場の下請け会社(運送)に再就職をしたのと同時に、綾歌町岡田西で暮らしている知人夫婦の家の一人娘と結婚してムコヨウシになれと命令した。

ゆかこは、シューショクができないので香美市土佐山田町西町で暮らしている電子部品製造工場の経営者夫婦のオンゾウシと再婚しろと命令した。

時は流れて、2018年6月1日のことであった。

円座町のマンションから逃げ出したゆかこの一家は、各地に分散して新しい暮らしをしていた。

事件が一段落して、これから安心して暮らせると想っていた時に、新たな悲劇の幕が再び上がった。

2018年7月2日のことであった。

ゆかことひろかずは、綾歌と土佐山田に別れてそれぞれ新生活を送っていたが、幸せに暮らしていると言うわけではなかった。

ゆかこが暮らしている土佐山田町にある特大豪邸にて…

かつひこの家では、家のことはすべて家政婦さんが全部取り仕切っていたので、ゆかこはかつひこの母親から『習い事を通じて自分磨きをしなさい。』と言われたので、習い事に集中していた。

かつひこの父親は、土佐山田で電子部品の製造工場を開業するまでの間、会社のために何もかもを犠牲にして働いて来た。

大学にいた時は、複数のアルバイトをしてお金をかせいで生活をしていた。

大学卒業後は、大阪の電子部品工場に就職して、与えられた仕事だけをしてお金をかせいで、工場の開業資金を作って、郷里の土佐山田で工場を開業した。

開業後も仕事一筋で通していたので、家で家族と一緒に晩ごはんを食べている時も仕事のこととか日本経済新聞に書かれている記事の話など…堅い話ばかりをする。

かつひこは、1年中仕事だけで遊びごとをせずに与えられた仕事をこなして、待遇面の不満を一切言わずに上の人の命令には素直にしたがっていた父親の背中を見て育った。

中学卒業後に上京して、働きながら通信制の高校へ通って、卒業後も同じ職場で継続して働いて来た。

父親が土佐山田で製造工場を開業した頃に土佐山田に帰って、工場の経営に加わった。

かつひこは、次期社長になることが決まっているので、マジメ一筋で毎日を過ごしていた。

時は、朝7時頃のことであった。

食卓には、家政婦さんが作って下さった朝ごはんが置かれていた。

父親は、日本経済新聞を読みながらものすごくイライラとしていた。

「今朝のNIKKEIはまたアメリカの大統領のむちゃぶりの記事か!!2018年の中間選挙で痛い目に遭わないとわからん大統領や!!何がアメリカ第一主義だ!!けしからん!!」
「あなた…」
「何や!!言いたいことでもあるんか!!」
「あなた…朝からイライラしないでよ…」
「やかましい!!男の仕事に口出しをしてくるな!!仕事に行ってくる!!片付けておけ!!」

父親は、家政婦さんに当たり散らした後、かつひこに『出勤時間だぞ!!』と怒鳴りつけて、引っ張り出して行った。

家の前にて…

家の前に駐車している黒のトヨタセンチュリーにかつひこと父親が乗り込んだ後、車が出発した。

その頃であった。

「なんなのかしらねぇもう…ダンナさんは毎朝毎朝毎朝イライライライライライライライラ!!」

家政婦さんは、父親が残した朝ごはんをイライラした表情で片づけていた。

母親は、家政婦さんに『ダンナは今日の仕事のことで気が立っているだけなの…』と言うてこらえてほしいと言うた。

母親はひと間隔をあけて、ゆかこにこう言うた。

「ゆかこさん。」
「義母さま。」
「ゆかこさん…今日習い事は休みだったけど、急きょお華の先生が来ることになったから…」
「予定変更って…聞いていないわよぉ…」
「どうしてそんなイヤそうな声で言うのよ…お華の先生の予定が変更になったから今日華道教室になったのよ…」
「華道教室の日はどうするのよ?」
「その日は、野市の(かつひこの母親の)実家へ行く日になったのよ…アタシの父親が99歳のお祝いだから…かつひこのお嫁さんを見せに行くのよ…」
「義母さま…」
「ゆかこさん…ゆかこさんが素敵なレディになるための自分磨きだと思って習い事をしているのでしょ…」

かつひこの母親は、ゆかこに自分磨きのための習い事なのよとクドクドクドクドといい続けてから、午後から華道の先生がお越しになるから準備をしておきなさいと言うて、食卓をあとにした。

ゆかこは、義母の言葉を聞いてうんざりとした表情になっていた。

かつひこの母親は、父親から強烈な声で怒鳴られた後、どこへ怒りをぶつけていいのか分からなかったので、ゆかこにクドクドクドクドと言うて八つ当たりをしていた。

『自分磨きのための習い事でしょ。』『素敵なレディになってほしいからクドクドと言っているのだからわかってちょうだい。』『磨いて磨いて磨いて行くしかないのよ。』『嫁がしっかりしないと、アタシは外に顔向けができないのよ!!』『わかっているのかしらねぇ…』…

かつひこの母親は、世間体ばかりを気にしまくっていたので、知らないうちに家庭内に大きな亀裂ができていたのであった。

その一方で、綾歌で暮らしているひろかずについでも、妻・ほのかとの結婚生活がうまく機能していなかった。

ひろかずは、正社員の仕事に転向をしたので月給は手取りで34万円で、収入が安定していた。

しかし、家庭内ではより深刻な問題を抱えていたので、ギスギスとした状態におちいっていた。

家庭内のより深刻な問題と言うのは、ほのかの父親が職を転々としている問題であった。

紹介して下さったお仕事に文句ばかりをいい続けている義父にひろかずは腹を立ててばかりいたので、義母が思い切り困り果てていた。

ひろかずは、ほのかに『オドレの父親をどーにかせーよ!!』と朝ごはん時にいっつもいっつも怒ってばかりいたので、義母が思い切り困っていた。

ひろかずが家から出まして数分後のことであった。

ひろかずの言葉を聞いていた義母は、泣きそうな声で義父に言うていた。

「あなた!!」
「なんなのだよぉ…」
「あなた!!もういいかげんにしてくれるかしら!!」
「だから何をどうしろと言うのだよぉ…」
「あなたね!!両手を広げて、数えて見なさいよ!!」
「だから何を数えろと言うのだよぉ…」
「あなたね!!今まで紹介して下さったお仕事を何度やめたのかを数えて見なさいよ!!」
「数えているよぉ…」
「あなた!!」

ほのかの母親は、父親に強烈な声言うた。

「あなたね!!あなたは収入が安定している仕事じゃないと再就職しないと言うている場合じゃないでしょ!!そうした気だるい気持ちと原因で何度やめていると言うのかを数えてもいないのにいいわけばかりを言わんといてくれるかしらね!!」
「いいわけばかり言っていないよぉ…」
「あなた!!あなたは、自分の仕事にほこりを持つと言う気持ちがないから職を転々としているのでしょ!!」
「ああ…もうええ…分かったよ…ハローワークへ行くよ…ハローワークへ行けと言うなら行くよ…」

ほのかの父親は、仕事を探しに行くと言うてハローワークへ行っていた。

しかし、ものの5分でヤーメタであった。

ほのかの父親は、ハローワークを5分で出た後はどこへ行っていたのかと言うと、パチンコ店や競艇場へ行って、ギャンブルにのめり込んでいたので、まともな暮らしができなくなっていた。

ひろかずのお給料だけでは生活をして行くことができない…

なので、ほのかの母親の実家からも援助を受けていた。

しかし、経済的に苦しい状況下に置かれていることに変わりはなかった。

そんな中で、恐ろしい悲劇が始まろうとしていた。
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