キミは当て馬、わたしはモブ。


 隣で帝塚くんが言葉をなくしているのがわかる。


 いや、それもそうだ。なんて言ったらいいか迷うよね。わたしもなんでこんなチョイスしたんだろうって、反省してるところだから。


 小さく喉を鳴らしてから、ゆっくり口を開ける。その動作だけでも、慎重に言葉を選んでいるのが伝わった。



「えっと……。今しろってことですか?」


「ちっ、違うっ!」



 でも正直そう思われても仕方ない発言だった……っ!


 そしてキミはどうして考えた上でストレートな物言いをするんだよっ!



「まぁ、今じゃなくてもたくさんできますしね」


「う……」


「今日も家に行きますね」


「うん……」



 あの日から、帝塚くんはほぼ毎日わたしの家に通っていた。放課後や、土日も含めて。


 たまにお兄ちゃんと出くわすときがあって、兄劣勢の口論が始まることもあるけど。


 男女交際としては、順調な部類なんじゃないだろうか。


 ……でも、わたしには悩みがあった。


 帝塚くんがウチに来るのが原因だ。彼は理由があって来ており、それがわたしの不満を深めている。


 その、理由っていうのが――

< 182 / 219 >

この作品をシェア

pagetop