キミは当て馬、わたしはモブ。



『早く俺のものになれば?』



「すみません。俺はもう佐久良のものなので……」


「ゲームのキャラと会話しないで!?」



 ――帝塚くんが、乙女ゲームにドはまりしてしまったのだ。



 感情移入を異常にしてるなって印象はあったけど、まさか毎日進めたがるくらいはまってしまうとは。


 なんでも、自分が選んだ選択肢でヒロインの行動や未来が変わっていくところが面白いらしい。


 うん、ブレないよね帝塚くんは。


 わたしの悩みは、このせいでわたしに構ってくれる時間が減ったということである。


 キスなんていつでもできるなんて言っておきながら、頻繁にやってるわけでもない。


 初めてしたときのがっつきは一体どこに行ってしまったんだ。


 今まであんまりゲームをやってこなかった男子の、好奇心が刺激されてる純粋な瞳。


 それを見てるだけでも、満たされるものはあるっちゃあるんだけど……やっぱり何か物足りない。


 ゲームと会話してないで、わたしの方を向いてほしいんですけど。



「さっ、佐久良、選択肢が出ました。一緒に考えましょう!」


「わたし、全部の反応知ってるんだけどなぁ……」



 そんなきらきらした眼差しで見られたら、断れないってわかってるのかなぁ……。

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