懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~

 名久井社長が書類から手を離し、気まずそうにご自分の首のうしろを(さす)り始めた姿を見て、私は自分の失言に気づいた。気づいた瞬間サッと血の気が引いた。

(私……なんてこと……馬鹿すぎる……!)

 え、そんなことってある⁇ と、口にした私が一番絶望していた。一体なんてことを口走ってしまったのか。〝子ども〟だけは今の質問において不正解だったとわかっていた。だから絶対口走らないようにと思っていたはずなのに……!

 言われたほうの社長の身にもなってみてよ。
 普通に困る! 怖い!

〝えらいこっちゃ〟と慌てふためきながら、泣きたい気持ちをぐっと我慢して社長に弁解する。

「な……なんちゃって――!」

 いや苦しいよ!?

 自分への突っ込みが止まらない。苦しいはぐらかし方なのはわかっている。
 でもこの空気、私のせいなんだから自分でどうにかしなければ……!

「お気づきだと思いますけど、冗談ですからね! 真に受けないでくださいね! 本気にされると私のほうが恥ずかしくなっちゃいますからっ……」
「いや……さっきの感じは冗談じゃないだろ」

(どんな感じで言ったの私……!)

 穴があったなら深くまで潜って、そのまま一生地中で暮らしたい。
 名久井社長の目が見られない。
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