懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
「い、いまっ……なんと……!」
「〝子種をやる〟と」
「どういう意味でっ……」
社長の唇が近づいてきて、一瞬身構えた私の耳元に低い声が囁いてくる。
「言葉通りだ」
それは直接的に言われるよりもずっと恥ずかしく、私の頬は一気に熱を持った。
「それともお前は交尾以外の方法で受精できる生物なのか?」
「……体外受精……」
「なんでそうなるんだよ」
逆にどうしてそうなったんですか。
私が口を開いて呆けているうちに、社長はだいたいの書類を拾い終えてしまった。
書類の束を私に託すと彼は立ち上がり、綺麗な手に着けているゴツめの腕時計を確認する。社長があんなことを言うから私は想像してしまった。あの綺麗な手に絡めとられて、体を蹂躙される瞬間を。
……ナイナイナイナイ!
「四時から新工場建設の検討会だったな。場所は役員会議室か?」
「ああ、はい……事前資料と、ご指示いただいていたデータはタブレットの中に入れておきました」
「さすが抜かりない。いつものことながら助かるよ。これはたっぷり褒美をはずまないと」
「っ……! たっぷり、って……」
さっきの会話のあとに、そのセリフはダメだ。
許容範囲を優に超える恥ずかしさに襲われ、私は何も言えず首を横にぶんぶん振る。
こんなのひどい。からかうにしてもひどすぎる!