懐妊初夜~一途な社長は求愛の手を緩めない~
「なぜ首を振る。欲しがりなくせに」
「その言い方やめてください!」
「本当のことだろ? 面と向かって子どもをせがんでくるとはいい度胸だ」
「だからあれは……違うくてっ……」
「珍しく慌てて可愛いな。顔も茹でダコみたいになってる」
「からかうのやめてください! 第一……あなたみたいな人が、私相手にその気になれないでしょう!?」
言ってから無性に虚しくなった。私の言った通りだ。
彼は地位ありルックス良し、仕事もできるハイスペックな御曹司。
片や私は雇われ秘書でパッとしない見た目(平均的な女子より背がデカめ)、自慢できるといったら段取りの良さくらいの、悪い意味でフツーの女。昔は魔女だと信じていたけど。
しかし名久井社長は、私の問いかけにきょとんとして。
「……それはわかっていてあえて訊いているのか?」
「え……そりゃ、その気になれないことなんて充分承知して……」
「俺は相手がお前なら三百六十五日、二十四時間、いつだって抱けるが」
「は」
「寝不足だろうと疲労困憊だろうと、じっくりねっとり愛せる自信があるぞ」
開いた口が塞がらなかった。
「じゃあな。約束は今晩、ホテルを予約するからリスケはなし。いろいろ準備がしたいなら先にチェックインしておけ。場所はあとでメールしておく」
「な、な、なな……」
「楽しみにしてるよ。魔女の宮内さん」