私に攫われてください
「食事を作っている最中から監視しておりましたが、怪しい動きはありませんでした。安心してお食べください」

警察官がそう言うと、メイドはギロリと警察官を睨みつける。それにエリーゼは気づかないフリをしてピラフを食べた。

豪華な食事も、高価で綺麗なドレスや靴も、こんな大きな屋敷ももうゴリゴリ……。そう思いながら、エリーゼはピラフを咀嚼する。

エリーゼが食べ終わってから、警察官はしばらくエリーゼを観察していた。自分たちの知らない間に睡眠薬が盛られていたら大変だからだろう。

エリーゼが眠らないとわかると、警察官は安心したような表情を一瞬だけ見せてまたドアを閉める。

エリーゼは、誰もいなくなった部屋でただ天井を見上げていた。



夜になると、さらに警護する警察官の数が増えた。国中の警察が集められたのかと思うほど、屋敷の至るところに警察がいる。侵入できる者などいないだろう。

「今日さえ乗り切ればいいんだ。結婚の日を早めてしまおう」
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