私に攫われてください
しかし、エリーゼは違った。習い事を「嫌」と呟き、家に縛られることに泣いていた。その時にクラウスは決心したのだ。彼女をこの家から解放すると。

怪盗という立場の自分を信用してくれるか心配だった。しかし、エリーゼは手を取ってくれた。それならば一生をかけて幸せにするしかない。

クラウスはネビルに戻り、警護をするフリをした。



午前零時が近づいてきた。

エリーゼの胸は高鳴り、眠ることなどできるはずがない。ベッドの上に座り、クラウスが自分を攫ってくれる瞬間を今か今かと待っていた。

外からも緊張が伝わってくる。エリーゼは、時計を見つめた。午前零時になるまで、あと数十秒。

心の中でカウントダウンを始める。十二、十一……。

胸がドキドキと音を立てる。自由になった世界はどんなに美しいんだろう。エリーゼの頰が何度も緩んだ。

十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、ゼロ……。

ついに、時刻は午前零時となった。クラウスの犯行予告時間だ。
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