私に攫われてください
「早く来て」

エリーゼがそう願った時、ドンと大きな音が響いた。エリーゼが窓に駆け寄ると、夜空にたくさんの花火が浮かんでいる。しかし、今日は祭りなどではない。

「綺麗……」

エリーゼは夜空を彩る大輪の花を見つめ、微笑んだ。



午前零時になった頃、突然夜空に上がった花火に警察官たちは当然驚いた。しかし、その花火の美しさに見とれてしまう。

庭にいたクラウスはニヤッと笑い、花火に警察官たちが見とれている隙にそっと屋敷の中へ入る。花火は当然クラウスが手配したものだ。

クラウスは靴を脱ぎ、その靴底から何かのスイッチを取り出す。そして何の躊躇いもなくスイッチを押した。

「さて、ショータイムだ」

数秒もしないうちに、「何だこの煙は!?」と庭が大騒ぎになる。しかし、咳き込む声がしたと思うと静かになった。麻酔ガスを充満させたのだ。

「これで庭の敵は減ったか」

クラウスは、制服から白いスーツとシルクハットの姿に変わる。もう変装する必要はない。
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