私に攫われてください
「お嬢様はいただいていきますよ」

口角を上げ、クラウスは屋敷の電気を落とすために廊下を走った。



クラウスは廊下で会った警察官を気絶させながら、電気の配線を切る作業に向かう。

屋敷で働く使用人たちは、エリーゼや両親の夕食を作って後片付けをした後に全員自宅に帰っている。この屋敷にいるのは、エリーゼと両親、そして護衛の警察官だけだ。

「使用人がいないのが幸いだ」

クラウスはそう呟き、捕らえようとする警察官のみぞおちを殴る。自分を追わない者に暴力は振るえない。

クラウスが電気の配線を切ると、一瞬にして屋敷は暗闇に包まれる。暗闇の中なら、さらに活動がしやすい。

クラウスはエリーゼのいる部屋へと向かった。ネビルに変装していた時に、エリーゼの部屋は教えてもらっていたので場所もわかっている。

ここまで、驚くほど順調だ。

「離れはこっちだな」

クラウスが離れにつながる廊下を走っていると、暗闇の中、何かが動く音がした。クラウスは咄嗟に近くにあった甲冑を盾にした。
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