私に攫われてください
「ご安心ください。私はあなたを自由にするために来たのです。あなたが望まなければ、私はあなたの傍から離れます」

「待って!私、外のことなんてほとんど何も知らないわ。……そばにいて」

女の子は男性の手を取り、言う。男性の頰が赤く染まった。

「では、一週間後にあなたを攫いに来ます」

そう男性は言った後、指をパチンと鳴らした。その刹那女の子の目の前に花吹雪が現れ、男性の姿をかき消していく。

女の子が目を開けた時、男性の姿はどこにもなかった。代わりにあったのは、一枚のカード。女の子はそれを拾い上げる。

「×月×日、午前零時。エリーゼ・ノーウッド嬢を攫いに参ります。       怪盗クラウス」

女の子は頰を赤く染め、ベランダから部屋へと戻った。



次の日、エリーゼ・ノーウッドが暮らす屋敷は朝から警察がやって来て大騒ぎとなった。

ノーウッド家は、この国に古くから存在する貴族だ。そして、今存在する多くの貴族を生み出したと言われている。この国の多くの貴族には、ノーウッド家の血が入っているのだ。
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