私に攫われてください
エリーゼはこの家の一人娘で、幼い頃から習い事や勉強などを強制させられていた。それは、いい相手と結婚して家を継いでもらうためだ。

貴族を継げるのは男子ーーー特に長男と決まっている。しかし、ノーウッド夫妻は子どもに恵まれず、やっと授かった子どもはエリーゼだった。そのため、エリーゼに結婚してもらい、男の子を産んでもらうしかない。

「ああッ!!エリーゼを盗もうだなんて……」

「あと一ヶ月で公爵との結婚が決まっているのよ!!」

豪華な家具が置かれたリビングでは、エリーゼの両親が駆け付けた刑事たちに喚き散らしている。それをエリーゼは冷ややかな目で見つめ、紅茶に口をつけた。

両親の言う通り、エリーゼは結婚することが決まっている。お互いの家が繁栄するためだけの愛のない政略結婚だ。しかし、両親は何としてでも結婚してほしいようで、刑事たちを脅している。

「いいか?もしもエリーゼが攫われてみろ!お前たちをクビにしてもらうからな!!」

「しょ、承知しています……。我々も全力で……」
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