私に攫われてください
クラウスと出会ったのは、エリーゼの叔父のもとに怪盗クラウスから予告状が届いた時のことだった。

厳重な警備を嘲笑うかのように、クラウスはガーネットを盗み出した。その時、エリーゼはクラウスの鮮やかな手口に見とれてしまったのだ。まるで、手品を見ているかのようだった。

なぜ、一度しか見たことのない怪盗を信用したのかはわからない。しかし、エリーゼの話を聞いてくれた。それが嬉しかったからだろう。

「悪い人には見えない」

エリーゼはポツリと呟く。クラウスは悪いお金持ちの家からしか宝石を盗まない。それに、メガネの奥に見えた瞳は優しいものだった。

クラウスが攫いに来てくれる日を、エリーゼは時が経つのが遅いと感じながら待った。



そして、ついに犯行予告の日となった。その日はピリピリと朝から空気が張り詰めていて、刑事と両親の顔には緊張が走っている。

「エリーゼ、絶対にここから出てはいけないよ！」

父親がそう言って扉を閉める。ガチャンと鍵がかけられた。
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