私に攫われてください
エリーゼは、屋敷の離れにある部屋に閉じ込められることになった。自分たちの手の中に入れておいたほうがいい、と両親たちは判断したのだ。警察の言葉など一切聞かない。

部屋には、ベッドや椅子などが置かれている。エリーゼが一日ここにいるためか、メイドが綺麗に掃除してあった。

「早く来て……」

エリーゼはベッドの上に横になる。エリーゼにとって、クラウスはただの怪盗ではない。自分を檻から連れ出してくれる王子なのだ。

エリーゼはゆっくりと目を閉じた。



その頃、屋敷の周りには警察官がさらに増え、いつクラウスが来てもいいように体制が整えられていた。

「いいか!?エリーゼ嬢を何があってもクラウスに渡すな!!これは我々警察のメンツがかかっている!!」

刑事が怒鳴り、警察官たちにも緊張が走る。エリーゼの存在は、この国の貴族たちにとって重要だ。攫われるわけにはいかないのだ。

銃を携帯した警察官たちが庭や裏口、屋敷の正面などに立って警戒する。誰もが目を光らせ、怪しいものは片っ端から調べられた。
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