見守り愛 〜ビタースイートな副社長と一目惚れの恋を成就したい〜*おまけ終了*
声をかけられ、ああ…とマグを見遣る。ご馳走様でした…とマグを返すと、大きな手がそれを握り引き上げていく。



「あの…」


もうちょっと此処に居させて欲しい…なんて、そういう我が儘を言えば、きっと嫌がられる。


(一人で居たそうだったもんな。それを私が邪魔してもいけないよね)


そう判断して立ち上がった。副社長は私の擦り切れたズボンの膝に気付いたらしく、「傷の手当てはしたか?」と訊いてきた。


「ああ…はい。友達がしてくれました」


そう言うとこっちを見上げ、そうか…とホッとした様に囁くもんだから、きゅん…と胸が竦んだ。


「あの…お邪魔しました!」


深く頭を項垂れて早くその場を去ろうとしたのに、後ろから立ち上がる足音が聞こえ、反射的に振り返った。


「コテージまで送ってやる」


マグを手放した副社長はそう言い、先に丘を下りだす。


「えっ…」


驚きの余り、足が出遅れてしまった。
慌てて彼の後を追おう走り出すと、立ち止まった相手が振り返って。


< 66 / 325 >

この作品をシェア

pagetop