メリークリスマス!
「大変な思いさせちゃうけどさ。この子を俺に抱かせてくれよ。」
渉の言葉に多香子は絶対にこの子を無事に出産すると、強く思った。
渉のこの大きな手に私たちの赤ちゃんを抱いてほしい。
多香子は渉の手に自分の手を重ねた。自分の手よりも一回り大きい渉の手。
その手はいつだって温かい。

たくさんの命をこの世に生み出してきた手。
その分この手から消えていく命もあった。

「ありがとう。」
多香子は伝えたい言葉はたくさんあった。でも、一番はやっぱりこの言葉だ。
「渉。ありがとう。」
その言葉に渉はそっと多香子の唇にキスをした。
「愛してる」という言葉と共に。

「無事に産まれて来いよ。」
渉と多香子はお腹の赤ちゃんに向かって声をかける。
いつの間にかお腹の張りは落ち着いていた。
「この木、どこに植える?」
「そうだな~。どんどん大きくなるからな。庭の中心に植えるか?」
「そうだね。大きくなるねきっと。」
「あぁ。お前も大きくなれよ。」
渉の言葉に多香子は心からの微笑みを返した。
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