メリークリスマス!
「昔、ここで倒れた人を助けたことがあるの。」
「え?」
樹は大きなツリーを見上げながら隣に立つ湊に話しかけた。
「その時はいろいろと悲観してた時だったから。サンタクロースなんていない。神様なんていないって悲観しながらも願ってた。」
過去を思い出して樹がふと隣を見ると、湊が穏やかに微笑み見つめていた。
その腕の中には二人の子供が眠っている。
「いつか来たいと思ってたの。」
「俺も。昔、クリスマスにここを通った時は会社を継ぐことが決まっていて、医者もやめる予定だったから投げやりになってたな。ここに居る人みなをうらやましくも思ってたよ。」
樹が湊の腕に自分の腕を絡めた。

「それが今じゃクリスマスを家族で楽しめてる。」
湊がそう言って樹をみる。
「うん」
二人はぐっすりと眠っている赤ちゃんを見つめた。
湊は自分のコートの中にすっぽりと赤ちゃんを入れて、大切に大切に抱いている。
「幸せだね。」
「あぁ。こんな未来想像すらしてなかった。」
「うん。」
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