君がいればそれだけで。
期待したかったんだ。王女の本当の性格を知ってくれているのは馴染みのある他国の王だけ。この国の中には俺しかいない。王女の事で話せる人がいなくて寂しい気持ちがあったんだ。

「パル、いる?」

「今向かいます!」

後ろでは入ったばかりなのに呼び出されて可哀想だとか、風呂場まで来るなんてと俺を同情したり王女の常識を問いたりしていたけれどいつもの事だから気にしない。気にならない。何よりも今は涙声になっている王女を慰める方が先だ。きっと何か辛い事でもあったんだろう。
脱衣場に入ると涙が溢れた。俺の顔を見て泣き始めたという事は誰かが危篤や同等の大怪我をしたのかもしれない。行方不明というのもあり得るか。落ち着いてからちゃんと聞き出さないと。
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