君がいればそれだけで。
そばにパルさんがいたんだから話せば良かっただろう。パルさんならどんな事でも喜んで聞いてくれたはずだろう。どんな事でも聞いてくれるからこそ話したくなかったのか。

「泣かないで。長く生きていればこんな事の一つや二つくらいあるわ」

「笑ってんなよ!そんな話、一個も二個もあってたまるか!」

「リズレイド!待って!」

笑いながらパルさんの涙を拭き取る王女に酷く腹が立った。辛い思い出は出来るだけ少ない方が良い。長く生きているのなら尚更、無いに越した事はない。それはきっと、我が儘じゃない。我が儘な話じゃないんだ。
部屋を飛び出した俺の腕を掴まれた。
< 89 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop