私だけのヒーロー


「スマホの存在、忘れてたんだ? 本当にさゆは面白いなぁ」



たっくんはツボに入ったらしく、下駄箱に着くまで、ずっと笑っていた。



こんなに笑っているたっくんを見るのは初めてだった。


自分が笑わせたことは嬉しかったけど、内容が内容なだけに、内心ちょっと複雑な気持ち。



昇降口を出て、待っていてくれたたっくんの元へ駆け寄る。



しかし、スーパードジ&不運の持ち主な私は、たっくんにたどり着く前に、その場に落ちていた少し大きめの石につまずいた。



案の定、私はたっくん目掛けてダイブし、たっくんはそんな私を両手で受け止めてくれた。



「大丈夫?」

「あ、ありがとう!」



たっくんに抱きつく形になった私は、すぐに離れた。



手にまだ、たっくんに触れた感触が残っている。



新学期初日に受け止めてもらったときは抱えられる感じだったから分からなかったけど、一瞬触っただけでも、細身なのに筋肉質なのが分かった。



たっくんもちゃんと男の子なんだ……と思ったら、急に意識し始めてしまう自分がいた。



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