私だけのヒーロー
男の子と2人きりで帰るなんて、人生で一度も経験することないだろうと思っていた。
この数日間で知った、たっくんの優しさが私を変えて、歩き出したたっくんの背中を、小走りで追いかけた。
高校から徒歩5分の距離にある最寄駅に着き、ホームでたっくんと同じ電車を待っていた。
先頭で左にたっくん、その右隣で待つ私。
まさか、男の子と並んで同じ電車を待つ日が来るとは思ってもみなかった。
周りから見たら、私たちはどういう関係に見えるんだろう?
カップルに見えるかな……。
不思議とそんなことを考えていた……そんなとき、突然後ろから声が聞こえた。
「小川?」
小川とはたっくんの名字。
私とたっくんが振り返ると、そこには小学校の同級生の羽鳥が立っていた。
私はその顔を見た瞬間、すぐに目を逸らして、羽鳥に顔を見られないようにした。
「やっぱり小川じゃん! 卒業以来だよな? 久しぶりー!」
久しぶりの再会にテンションが上がっている羽鳥に対して、たっくんは表情を一切変えずに、「久しぶり」と小さく呟いた。