私だけのヒーロー
早くどこかへ行って。
私にはどうか気づかないで……。
そんな私の願いも虚しく、羽鳥は、私の顔を覗き込むように見てきた。
そして、驚くように「え?! パー子?!」と、大きな声を出す。
その声と言葉のせいで、小学校の嫌な記憶を一瞬で思い出した。
きつめの天然パーマな母をもつ私は見事にそれを受け継ぎ、生まれたときから髪の毛はくるくるだった。
特に生え際のパーマがきつくて、短い前髪は踊るようにパーマがかかっていた。
幼稚園の頃は特に気にしたことがなかったけど、小学校に上がり、ある日を境にこの天パが嫌いになった。
1年生のとき、同じクラスだった羽鳥に「お前の髪の毛、犬みたいだな! くるくるしてておもしろー!」と、馬鹿にするように髪の毛を触られた。
やめて!と嫌がる私に、羽鳥はさらに面白がるようにして「こういう髪の毛って、天パって言うんだろ? 今日からお前の名前はパー子な!」と、無理やりあだ名をつけられた。
それからというものの、私をからかうように髪の毛を触ってきたり、あだ名を大きな声で呼ばれたりした。