私だけのヒーロー
「ありがとう。それと、迷惑ばっかりかけちゃってごめんね」
しっかりとカバンのチャックを閉めた私は女の子へ向かって頭を下げた。
「んー? 迷惑なんてかけてないよ。むしろ、おもしろい子だなぁって思ってちょっと気になってる!」
笑顔でそう言う女の子は『座って座って!』と私の席を叩いて、自分は私と向かい合うように後ろ向きに座った。
「名前はなんていうの?」
「さゆ! 名前……聞いてもいい?」
「あたしは奈津子。よろしくね」
こうして出会った奈津子とは、この日から仲良くなり、一緒に行動するようになった。
新しいクラスになってから1週間が経ったある日、他のクラスであろう、見た目が派手な女の子3人が教室へ入ってきた。
その3人が真っ先に向かったのは1番窓側のたっくんの席。
お昼の時間以外はほとんど寝ているか、ボーッとしているたっくんは、もちろん今も机に突っ伏して寝ている。
廊下から2番目の列に座る私の席からは何を話しているのか鮮明には聞こえないが、女の子の1人がたっくんの背中をポンポンと軽く叩いた。