私だけのヒーロー



男の子とコミュニケーションをとれない私にとって、たっくんは遠い存在。


想像でしかないけど、きっと、たくさんの女の子と遊び放題の生活をしてきたんだろう。



自分のカバンからスマホを取り出し、パズルゲームのアプリを起動した。



これ以上たっくんたちを見ていたら、さすがに変質者になってしまうと思い、ゲームで気を紛らわせることにした。

それと同時に、胸の奥が締め付けられるような感覚に陥った。



ん? これはなんだ……?

初めての感覚に、とっさに自分の胸を左手で触った。



風邪かな?



私はまだこのとき、この気持ちがなんなのか、わかっていなかった……。



帰りの挨拶が終わり、奈津子にわかれを告げ教室を出た。



「スマホがない!」



下駄箱まで来て、カバンにスマホが入っていないことに気づき、教室まで走った。



教室には誰もいなくて、静まり返っていた。

……と思いきや、窓際の席に見覚えのある背中を見つけた。



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