私だけのヒーロー
「怖い人? って誰のこと?」
「へ?」
「さっき怖い人に襲われるよって言ってなかった?」
不思議そうに私を見てくるたっくん。
かっこよすぎるその顔に、思わず目をそらした。
「あのね、このまま起きなくて夜になっちゃったら……って色々想像して、そしたら怖い人に襲われちゃうかもしれないなって思って……」
「じゃあ、俺のことを心配して起こしてくれたの?」
「うん」
チラッとたっくんを見ると、まだ真っ直ぐと私を見ていた。
不覚にも、ドキッとしてしまった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。
一向に収まらない、はじめてのドキドキに戸惑いを隠せない。
いやもう、こんなかっこいい人に見つめられたら、誰だって好きになっちゃうよ。
幼なじみっていっても、面と向かって話したことなんてほとんどないから、こうしてたっくんの顔を見ていると、ただただイケメンって罪だなぁと思う。
「さゆ?」
「はい!」
消えないドキドキと格闘している私なんか知る由も無いたっくんは、私のほっぺを人差し指で突っついてきた。